2005年度[第47代](社)鳥取青年会議所理事長 涌本 知彦君

JCにおける履歴

1994年
  • 入会
  • 総務委員会委員
1995年
  • 日本JC個と地域を活かしたまちづくり推進会議委員
  • 第2政策委員会委員
1996年
  • 第3事業委員会副委員長
1997年
  • 第2事業委員会委員長
  • 鳥取ブロック協議会ひとづくり青少年委員長連絡会議委員
1998年
  • 鳥取ブロック協議会運営専務
  • 日本JC財務運営会議委員
  • 会員交流委員会委員
1999年
  • 副理事長
  • 褒賞特別委員会委員
2000年
  • 因幡市民特別委員会委員
2001年
  • 特別委員会委員
2002年
  • 鳥取ブロック協議会副会長
  • 第3事業委員会委員
2003年
  • 夢砂丘発信委員会委員
2004年
  • 副理事長

青年会議所活動に対する所見書

はじめに

 先日、無事盛会で幕を閉じた創立45周年記念大会では、「誇りと責任」のキーワードの元に「スローソサエティの実現」、「地球環境への配慮」を意識しながら、これまでの活動を十分理解した上で、我々の因幡の誇りを表現し、今後それらにしっかり責任をもって、守り、育て、発展していく決意を表明しました。参加して頂いた多くの方に身に余る好評を頂き、手作りの極みであった懇親会はそれ自体が一つの事業でありましたし、より具体的な内容の中長期運動ビジョンを発信できました。現時点での最善のカタチでの式典・懇親会そして中長期運動ビジョンを表現できたと思います。また、「組織の具体的な活動内容の公開」といったある種の時代の要請に対して、対内的に内容のある議論を行えたことも一つの成果といえます。あらためて、過去の検証と未来の方向性について真剣に考えまとめ、全メンバーで共有していく「周年」の重要性を再確認しました。そして2005年度は46年目、創立50周年へ向けた第一歩の年となります。具体的には中長期運動ビジョンの内容をテーマとして、委員会活動に盛り込む段階となります。

 また、今回の周年記念大会運営にあたって実行委員会でも議論を重ね実施しましたが、現在、多くの行政・企業が地球温暖化防止に代表される環境への配慮を行っています。われわれも公益法人として、特に国際的・国家的な問題に高い関心を示し、その意識を表していくことは当然のことです。今後とも我々の行う各種事業ではゴミを出さない運営、エコロジーに配慮した運営を心がけ、地球環境への配慮、環境に対するやさしさを参加者に伝えていく必要を感じます。まちづくりという公的な活動を行っている以上、当然あるべきたしなみともいえるでしょう。

 そして、今年秋には大型広域合併がこの因幡でも行われます。我々は「因幡はひとつ」を合い言葉に鳥取県東部15市町村を一つのエリアとして、広域的なまちづくりを展開してきました。今伝えられている枠組みで行くと合併後は1市4町となります。これは我々がまちづくり活動を進める上で大きな転換点となります。単に行政の枠組みが変わったということだけでなく、市民の“因幡”に対する連帯感を意識したまちづくりへのアクションがより一層求められます。我々は十数年来、“因幡”を一つのエリアとして、広域的なまちづくりを行ってきました。それらをしっかりふまえ、今後、この因幡へのまちづくりに活かすべきです。

 さらに、2006年には国の公益法人に対する見直しがあります。これまでの社団法人、財団法人といった枠組みが大きく変わる可能性が高くなってきました。これに加えて、公益法人会計の見直しは待ったなしです。組織として公益法人改革に対する考えを確立し、財務機能を実践段階としてしっかり強化すべき時にきていると思います。

オピニオンリーダーの存在の重要性

 私は大学生の時に村おこし、町おこしをテーマに論文研究を行っていました。ホンダのサーキット場があることでも知られる栃木県芳賀郡茂木町のまちづくりは典型的な農村の町おこし、都市部に近い農村の特徴を活かしたまちづくりでした。茂木町内からはもとより、関東一円、東海、遠くは東北からまちづくりに関わる行政・民間の方が多く集まる「農村出会い塾」に数度と無く参加し、車座でのまちづくり談義の輪に入れてもらいました。非常に仲良くしていただき、町内で行われる事業やイベントにはもれなく呼ばれ、ほぼ町内のことを把握する中で、驚いたのは、いわゆる「まちづくり馬鹿」・キーパーソン・オピニオンリーダーの存在の多いことでした。

  • いいことはどんどんやってみよう。(失敗を恐れず、トライ)
  • その呼びかけに、なんだか面白そうだから、参加してみよう。(足を引っ張らない)
  • おれならこうやるぞ、やってみよう。(別の人が別の案でトライ)

とつぎから次へと案が主体者とともに出てくるような地域でした。まあこれは、北関東の県民性というものかもしれません。
その町の調査を経て研究論文を書き上げた訳ですが、その経験から次のことを学びました。

  • まちづくりにはオピニオンリーダー(キーパーソン)が必要です。数が多ければ、多いほどより活発になるのはいうまでもありません。(ただし足をひっぱらなければ)
  • まちづくりはそのオピニオンリーダー達の熱によってその進度が左右されます。
  • まちづくりにはオピニオンリーダーに対するフォロワー(追従者)達の支えが必要です。
  • そのリーダー、フォロワーはプロジェクト、時期ごとで入れ替わる、メンバー増減することも可です。
  • 他の地域の人、他の地域の出身者の参加が非常に重要です。多様な意見がもたらされる可能性が大きく、結果奥の深い考えになることがあります。

これらの法則は私の発案ではありません。当時から多くの有識者、経験者がおっしゃっておられたことであり、鳥取JCに所属して11年、多くのまちづくり事業に関わってきましたが、20年経てもなお通用する法則だと思います。

我々の目指すひとづくりはリーダーづくりであろうと確信します。

青少年問題は社会全体の問題

 私がLOMで最初の委員長をしたときのことです。青少年の犯罪が増え始めた時期でもありました。内外で「こころの教育」がうたわれ、新聞などの論説でも「なんとかしなければ、大変なことになる」と声を大にして言われ出した時期でした。私の委員会は青少年がテーマでしたから、4月いっぱい、前半の大きな山場である「鳥取こどもまつり」の運営に一生懸命でした。直後、5月には神戸連続児童殺傷事件がおこりました。その悪質性、しかも犯人が中学生ということに、青少年の委員長として、何よりびっくりし、何の手をほどこすことが出来るのか一生懸命考えた覚えがあります。

 最近の事件を振り返るまでもなく、子どもだけの問題ではない、これは大人の、又は社会全体の問題であります。表現の自由に名を借り、ビジネスとして特化した、ポルノや性暴力・バイオレンス表現が余りにも簡単に見ることのできる環境、また大人の買春ビジネスの横行など、我々が子どもの頃と比べて余りにも大人のモラルが低すぎるのも目を覆うばかりです。自分の子どもも親の目の届かないところで、こういったものに触れるかもしれないと考えるとぞっとします。

 これはほんの一例ですが、因幡だからこそ、安心して子育て、教育のできる環境を得られる、そういった活動も大事になるのではないでしょうか。

因幡の誇りとひとづくり

 江戸時代までは鳥取県東部、因幡は日本でも有数の大都市であったにも関わらす、戦後の国の施策の中で比較的、産業開発の速度のゆったりした地域であったおかげで、他の地域の方がうらやむくらいの自然が残っています。しかも、海に行くのも、山に行くのも非常に近く、食べるものもおいしく、古来から人間が営んできた昔ながらの生活に近い暮らしができ、やさしい住民気質をもっている「日本の原風景」ともいえる特徴をもつ地域です。しかし、高度経済成長期の数十年間にあっては、産業的に大都市部と大きく引き離され、田舎に住むものとして、都会をうらやむような状況にあったことはご存じのことだと思います。ところが一転、バブル経済成長期を経て、ここ数年来の心の時代への回帰、地球環境保全の潮流にあって、多くの人は古き時代の生活を懐かしみ、その再生を模索し始めています。人と人との交流による心の温かさを求め、自己と自然との関わりの重要性を認識し、本来あるべき人間性の再生をも模索されています。我々の住む因幡は大量消費を元とした経済的競争では立ち後れていたかもしれませんが、自然、懐かしさ、やさしい住民気質などの「自然インフラ」ではかなりのポテンシャルを持っていると断言できます。これまで開発されてこなかったことが、マイナスでなく、大きなプラスになってパラダイム転換されつつあることを十分認識すべきだと思います。

 鳥取県などの行政は上のような恵まれた特徴を活かし、交流人口増を見込んで、将来的に観光で生計を立てていこうとする観光立県を掲げています。観光とは文語に直しますと、「光を観る」と書きます。光とは他の地域にはない、きらりと光る「モノ」と言う意味であり、それは雄大な自然、その土地で活躍した歴史上の人物の偉業、古くからの町並み、文化的な建造物などがあります。観光に来て、他の地域の人が一番興味を示すことはそこに異なる文化と歴史があり、それを誇りに思いながら、日常の生活を送っている人々の姿です。訪れる人が本当に見たいのは「モノ」でなく、伝えられ今も滅びないで息づいている「心」に、感動するのではないでしょうか。

 我々の住む因幡には誇るべき文化・歴史がたくさんありますが、もし「心」が無ければ、それらはあくまでも「モノ」です。それがあることによって美しく豊かに見える「人」が存在して、初めて光る「モノ」となるのではないでしょうか。

 自らのこととして因幡を思い、語る人の存在無くして魅力ある因幡はあり得ません。地域の誇りの醸成を切り口にひとづくりに取り組む重要性を強く感じます。

ジュニアへのリーダーづくりアクション

 ある委員会で「因幡って何だろう」、「因幡の魅力って何だろう」、「我々の誇りって何だろう」と、参加したメンバーで真剣にブレンストーミングを行ったことがありました。非常に有意義な数時間が過ぎ、委員会閉会時の「因幡市民憲章」の唱和が始まりました。私はこのとき、いつもは感じない感情に見舞われました。それは、因幡市民憲章の最初の言葉「大いなる山々よ・・・」のリードを聞いているときにその言葉一つ一つが胸にせまり、ついには涙腺がゆるみました。こういった経験は皆さんもあると思います。因幡の事を真剣に大事に考えている、ふっと因幡に関する言葉が耳から心に入ってきた、そしたら涙が出た。思いがあまるとこうなるんだなとあらためて、他の組織ではなかなか味わえない、このJCの組織の面白さ、力強さを感じますし、この経験を活かすべきと考えます。

 子どもの頃から地元に愛着を持つことの重要性はいまさら言うまでもないでしょう。私はこの因幡の子どもたちにも地元因幡に誇りをもってほしい。正しい知識を与え、しっかり考え、きちんと行動できる子どもたちをたくさん輩出したい。県外に出ても、しっかり自信を持って、地元を説明できる人材をつくるべきではないでしょうか?そのためには小学生のころから徹底的に因幡は何であるかを考えさせることが非常に重要です。

 自らの感性で感じた因幡の魅力を美しく、誇らしく語れることは非常に素晴らしいことだと思います。その地域に住む人たちが誰よりその地域のことを誇りを持って語れることこそその地域のポテンシャルを高め、魅力的な地域にする第一歩だと思います。子どもたちに対するこのような「リーダーづくりアクション」は我々の因幡市民共創運動の根幹ともいえるインパクトを持っていると確信します。

市民との協働のまちづくり

 ここ近年、市民のまちづくりや行政に対する考え方が変わってきました。以前であれば「お上がすることは間違いない」というような風潮があり、なかなか市民の声を反映するというような状況ではありませんでした。ところが昨今、多くの市民が地球規模での環境破壊に気づき、「環境共生」とか「持続的発展」というようなテーマを認識し、興味を持つ中で、NPO法が出来、都市計画法が改正されたり、そして都市によっては市民参加条例ができたりと法律や制度が整備され、環境、まちに対しての市民の能動的な意識がますます高まってくるようになりました。これらは町内活動の活発化、NPO法人の活躍など市民が参画するまちづくりがより一層盛んになっていることで見えてきます。

 1950年代、戦後の復興期、JCだけがまちづくりをやっていた時代から、うれしいことに多くの市民がまちづくりに関心を持ち、広く行動する時代になりました。これはJCメンバーとして行政や関連団体だけでなく、多くの市民と更に目線を一緒にして、共にまちづくりを行う時代になったともいえます。JCとして、市民参加のプロセスを重視して、市民や組織との相互認識、相互理解をもつことにより、しっかりと根付く協働運動によるまちづくりを行う必要性を強く感じます。

 具体的なアクションを起こし、市民と協働し、継続性を持ちながらまちづくりを実施することにより、「市民にわかりやすいJC」が実現され、そして多くの方とふれあい絆ができることで「市民との距離の近いJC」が実現され、結果的に関わるすべての人とやさしさの共有を目指したいと思います。

市民とのワクワクする関係の構築

 このような取り組みを地道に続けることで、これまでより一層市民との距離感が縮まることが期待されます。そして、JCと市民との距離感が縮まることで得られるインパクトの大きさは図りしれません。多くの市民の方から鳥取JCを認知してもらえ、例えば実施した事業についての多くの感想をいただけたり、次の事業についての要望やアイデアをいただけたりするかもしれません。さらに志のある組織や市民とお互いに同じ土俵でまちづくりに対する意見の交換が出来るようになれば、これらはJCと外部の方のワクワクするような楽しい関係を作ってくれると思います。

 鳥取JCが何たるかをこういった取り組みを通じて、しっかり自己主張すべき時代だと思いますし、本当の意味での”社会の公器”としての鳥取JCを目指すべきだと思います。我々に出来ないはずは絶対にありません。

JC活動のすばらしさ

 われわれは家庭・仕事を持っています。これらを充実させながら、さらにJC活動も行おうという大変能動的な集団に所属しています。そんな中、JC活動を通じて多くの仲間と共に考え、行動する中で他のメンバーの素晴らしい一面に気が付きます。そんな百人百様の素晴らしい能力や特徴が相互に連携し合い、一つの目的にベクトルを同じくして向かうのであればこんなに力強いことはありません。それぞれの持ち味が活かし活かされ、補完しあいながら、明るい豊かなまちをつくる原動力になるとすれば本当に素晴らしいことだと思います。

 JC組織の特徴を語る上で単年度制がありますが、そのメリットとして挙げられるのはメンバーの立場が毎年変わるということです。私は一昨年、3年ぶりに常設委員会への配属となり、フロアーとして非常に楽しい委員会活動をさせて頂きました。仲間と共に事業などを一から創る楽しさは何ものにも変えられず、あらためてその良さに気が付くこととなりました。

 「お世話をされる立場」から「お世話をする立場」に変わることはその前の立場を深く理解することになります。JCの役割を1年というスパンで変えることで、お互いの立場を理解し、気持ちを察し、”気遣い”が出来る能力を養います。年度が変わり、立場を変えることは簡単なことではありませんが、われわれはその修練をするためにこのJCの門をたたいたはずです。「ちょっと無理してやってみよう。きっとその先には素晴らしい未来があるから。」これはある先輩の有名な言葉ですが、正に金言としかいいようがありません。

 こういった“気遣い”が出来る能力を養った上で、JC内で更に異彩を放つのは「リーダーの熱意」です。委員長がその役割で目的を示し、これはという手段にこだわり、邁進する姿は我々の心を打ちます。その委員長の熱意によって、動かされ、活動を行い、そして事業の成果を得たとき、我々はその労苦とは比較にならないすばらしいものを得て感動します。

 その素晴らしいリーダーは未来の自分を映す鏡です。目指すべき未来の自分がそこにはあります。「自分もあの人のようになりたい。」必ずこう思うでしょう。それは向上心を持ってJCに入会し、現状の自分より成長したいと思っているからです。新たな挑戦をし、やり遂げれば、去年より今年、今年より来年と一回り成長した自分がいます。これがJCの活動のすばらしさです。皆さんの周りには自分を映した鏡だらけです。周りを見てください。過去の自分、未来の自分、見えてきましたか?

 単年度という最短のスパンで組織替えを行う団体にあって、多くの役職や立場を経験することで会員の自己修練を可能にしています。まるでこれは細胞が生まれ、育ち、そしてどんどん大きくなり、だんだん全面に出て行き、活躍し、やがて死滅していく様に似ています。それぞれ在籍期間の長短はあるにしても、入会から卒業までに、入会時とは大きく違う自分に成長して、卒業していくからです。

 時代の変化の中、社会、会社、家庭の環境はどんどん変わります。これらの変化に適応し、発展するためにも是非とも個々のポテンシャルを高めていきましょう。

最後に

 この因幡には、数多くのすぐれたまちづくり団体、志ある市民が存在します。しかし、何よりもこの因幡で一番輝く鳥取JCでありたい。

 多くの先輩より築かれてきた伝統を受け継ぎ、新しい時代の要請に積極的に立ち向かい、守り残すべきは残し、変えるべきは勇気を持って変革し、来るべき50周年に向けて進化します。新行政枠の因幡を迎える2005年度、我々は鳥取県東部をエリアとし早くから広域的なまちづくりを行ってきた団体として、自覚と責任を持ち、さらに一歩進んだ活動を行い、この因幡を日本一誇りを持って暮らせるまちにします。

 あらまほしき因幡を目指して。